後継者が社内を混乱させる、たった1つの勘違い&解決策|後継者育成 相談協会
多くの後継者が「たった一つの勘違い」によって、社内を混乱させています。私(オーダースーツ銀座英國屋3代目社長)自身もそうでした。
そして、中には親子問題にまで発展し、事業承継どころではなくなるケースも多々あります。
このコラムでは、この「勘違い」を解説するとともに、その解決策をご紹介します。
このコラムの要点は、以下の通りです。
・後継者の勘違い「自分が成果を出してこそ、信頼される」
・外部で学んだ知識・ノウハウが、さらに勘違いさせる
・後継者は「周りが成果を出せる環境にしてこそ、信頼される」と考えるのがオススメ
・後継者育成のオススメは「現経営者にとっての課題を、現経営者と共に解決させる」
このコラムが、大切な会社を託す後継者の育成の一助になりましたら幸いです。
Contents
後継者の勘違い「自分が成果を出してこそ、信頼される」
ほとんどの後継者が陥る勘違いは、「自分が成果を出してこそ、信頼される」という認識です。
私は多くの後継者にアドバイスをして参りましたが、この勘違いに陥っていない後継者は稀です。(お恥ずかしながら、私自身もこの勘違いをしていました。)
そして、この「自分が成果を出してこそ、信頼される」という勘違いが出発点となって、あまりにも多くの混乱・不和・失敗・破綻が引き起こされています。
私の実感では、現経営者である親と、後継者である子供が衝突する原点が、この「自分が成果を出してこそ、信頼される」という勘違いであることも珍しくはありません。
勘違い「自分が成果を出してこそ、信頼される」が巻き起こす、後継者育成の失敗
後継者が「自分が成果を出してこそ、信頼される」と勘違いしてしまうと、成果が出にくいばかりか、むしろ社内を混乱させる可能性が高くなります。
そして、後継者は現経営者・社員からの信頼を失い、後継者も現経営者・社員を避けるようになってしまいます。
ここでは、「自分が成果を出してこそ、信頼される」という勘違いが巻き起こす、後継者育成の失敗について解説します。
後継者は「今までとは違った方法・考え方で、成果を出す」と考える。
「自分が成果を出してこそ、信頼される」と勘違いしていると、「今までとは違った方法・考え方で、成果を出そう」と後継者は考えるようになります。
これは現経営者・ベテラン社員の方が習熟している「今までの方法・考え方」を後継者が踏襲して、「今まで以上の成果を出す」ことはとても難しいためです。
このため、後継者が「自分が成果を出してこそ、信頼される」と勘違いしていると、「今までとは違った方法・考え方で、成果を出そう」と考えるようになります。
「今までとは違った方法・考え方で、成果を出す」では、成果が出にくい。
しかし、「今までとは違った方法・考え方で、成果を出す」では、そもそも成果が出にくいもの。
会社がそれまで培ってきた社員・技術・ノウハウ・資産etc…を活かしにくいからです。
特に、ベテラン社員に変化を求めるような方法・考え方は、社内を混乱させてしまうため、なおさら成果が出にくくなります。
成果が出たとしても、信頼を得にくい。
さらに厄介なことに、「今までとは違った方法・考え方」で、もし「成果が出たとしても、「社内からは信頼を得にくい」という現実が待ち受けています。
というのも、「今までとは違った方法・考え方」で成果を出した場合、それは「今までの方法・考え方の否定」、もっと言えば「既存社員の否定」と受け取られてしまう事もあるからです。
残念ながら、「今までとは違った方法・考え方」で成果を出すこと自体が難しく、成功したとしても、なかなか社内からの信頼は得にくいのが現状です。
後継者が、会社・社員を嫌うようになる。
後継者が「自分が成果を出してこそ、信頼される」と勘違いしている場合、上記の通り、成果が出にくく、かつ、成果が出たとしても信頼されない、といった状況に陥りやすいものです。
そして、悪循環の末には、社内の反応を見た後継者が、会社・社員を嫌うようになります。
お恥ずかしながら、私自身も「自分が成果を出してこそ、信頼される」という勘違いを出発点とし、会社・社員を嫌い、退職寸前まで至ったことがあります。後継者にも関わらず…です。
こうなってしまっては、後継者育成は、失敗したとしか言いようがありません。
なぜ、後継者は勘違いしてしまうのか?
ここで、後継者が「自分が成果を出してこそ、信頼される」と勘違いしてしまう要因についても、解説いたします。
後継者としての責任感
後継者が「自分が成果を出してこそ、信頼される」と勘違いする要因は、「後継者としての責任感」にあります。
一般社員であれば、そこまで強く「信頼されなければ…」とは思いません。
しかし、後継者の場合「信頼されなければ…」と、強固に思い込んでしまうものです。
そして、「どのようにすれば、信頼されるのか?」と考え、「自分が成果を出してこそ、信頼される」という考えに至ってしまうのです。
外部で学んだ知識・ノウハウが、さらに勘違いさせる
多くの後継者は、外部で知識・ノウハウを勉強してきます。
書籍・資格(ex:中小企業診断士)・経営セミナー・後継者塾・ビジネススクール・MBAなどなど…。
これらで勉強した後継者は「学んできたことを、活かさなければ」と思ってしまいます。
つまり、「自分が学んできたことを活かして、自分が成果を出してこそ、信頼される」と勘違いを強化してしまうのです。
結果的に、自社の状況、また、現経営者が解決したい課題とは関係ない方向で頑張ってしまい、成果も出しにくく、結果的に信頼を失う結果になってしまいます。
私自身も、中小企業診断士の資格勉強を始めとし、外部で学んだあとは、「少なくないお金も掛ったから、それを活かさねば…」と思い、勘違いを強化して、失敗していました。
後継者は「周りが成果を出せる環境にしてこそ、信頼される」と考えるのがオススメ
そこで、後継者にオススメしたいのは、「周りが成果を出せる環境にしてこそ、信頼される」という考え方を持つことです。
「(現社長が人生尽くして育ててこられた)社員が、成果を出せる環境を整えること」が、信頼を得るためにはとても有効です。
例えば、営業担当の社員にとっては「ある程度、購入する気のあるお客様」を目の前に連れてきてくれたら、嬉しいものです。
また、商品がメディアから取材されるようにし、自分が携わった商品に注目が集まれば、やはり、それも嬉しいものです。
後継者自身が成果を出す必要がありません。
それよりも、後継者によって、周りの人が成果を出せるようにすることが必要です。
だからこそ、「周りが成果を出せる環境にしてこそ、信頼される」と考えることをオススメします。
後継者育成のオススメは「現経営者にとっての課題を、現経営者と共に解決させる」
最後に、後継者育成のオススメ方法について、解説します。
それは「現経営者にとっての課題を、現経営者と共に解決させる」という視点を持つことです。
外部で学ばせると、学んできたものを実践したくなる。
文中で触れたように、外部で学ばせると、後継者は「学んできたことを、活かさなければ」と思ってしまいます。その費用が高額であればあるほどに、その思いが強くなります。
その思いから「最新手法」「有名企業の手法」を導入しようとすると、会社の状況を無視してしまうことが多く、成果もでにくくなり、もし、成果が出たとしても、むしろ社内の反発を招き、信頼を失うことになります。
だからこそ、先に外部で学ばせることは、あまりオススメできません。
後継者育成のオススメは「現経営者にとっての課題を、現経営者と共に解決させる」
では、どのようにして、後継者育成をするかといえと、「現経営者にとっての課題を、現経営者と共に解決させる」ことをオススメします。
理由は、現経営者が手助けできるからです。
特に、現経営者が手助けしてあげるべきは、「どこまで社内が変化に耐えられるか?」の判断です。また、「社員を巻き込むこと」です。
これらは、後継者にとっては、至難の業です。特に、「どこまで社内が変化に耐えられるか?」は、今までの経緯も分かっていなければ、判断は難しいものです。
こうした現経営者の手助けがあれば、成果も出やすくなります。
そして、「現経営者にとっての課題」は、やはり会社にとって必要な課題解決であるため、それが解決できたならば、より会社の強化にもつながります。
また、取り組む中で、現経営者と後継者で多くの対話が生まれるため、不要な対立・不和も避けられます。
だからこそ、「現経営者にとっての課題を、現経営者と共に解決させる」ことがオススメします。
効率的・効果的な外部の勉強ができる
「現経営者にとっての課題を、現経営者と共に解決させる」中で、直面した課題を解決するための「外部の勉強は」、とても効率的・効果的ですのでオススメです。
課題が明確になっていれば、必要な情報の判断もしやすいからです。
また、必要な情報の判断ができれば、その勉強にかかる費用も小さくできます。
例えば、課題が明確になっていない状態で、後継者塾に通うと、10~100万円が掛かる上に、学ぶ内容は浅く広くなってしまうため、なかなか成果も出にくいものです。
一方で、課題が明確になっていれば、Youtubeで関連動画を無料で視聴、メルカリで書籍を1,000円×20冊購入すれば、その課題については、2万円だけで、ほぼ専門家レベルで理解が可能です。また、一人の人の意見にだけ流されることも少なくなります。
必要であれば、スポットコンサル(1時間で約3万円)で更に専門的なアドバイスをもらうとしても、計5万円です。予備知識が少ない場合には、コンサルの選定も難しいですが、それだけ理解していれば、コンサルの選定間違いも相当少なくなるでしょう。
このように、「現経営者にとっての課題を、現経営者と共に解決させる」の中で、直面した課題を解決するための、外部の勉強は、とても効率的・効果的ですので、オススメです。
後継者育成のオススメ題材は「WEBサイト改善による集客力UP」
「現経営者にとっての課題」は各社の状況によって異なるため、すべての企業に共通する「後継者育成のオススメポイント」を挙げることは出来かねます。
それを前提としながらも、「WEBサイト改善による集客力UP」は良い題材かと思います。
WEBサイト改善に必須な要素は、「他社・自社を調査し、自社の良いところを文章化すること」だからです。
WEBサイトを見て、購入してもらう・予約してもらうためには、「競合他社と比較してよりよく見えるようにすること」が必要です。
そのためには、自社理解、特に、自社の「良いところ」を引き出すことが必要です。この中で、現社長・社員の努力にも、後継者が目を向けられ、自然に、敬意を払えるようになります。
また、WEBサイトが改善され、集客(=ある程度、購入意思のあるお客様を集めること)で成果が出れば、社員からも喜ばれます。
こうしたことから、後継者育成のためにオススメする題材は「WEBサイト改善による集客力UP」です。
(※各社の状況に依ります。)
なお、デザインよりも「他社・自社を調査し、自社の良いところを文章化すること」に注力をすることをオススメします。
効果があるのは、「競合他社と比較してよりよく見えるようにすること」であり、それはデザイン以上に「文章化」によってできることだからです。
まとめ
このコラムでは、この「勘違い」を解説するとともに、その解決策をご紹介いたしました。
このコラムの要点は、以下の通りです。
・後継者の勘違い「自分が成果を出してこそ、信頼される」
・外部で学んだ知識・ノウハウが、さらに勘違いさせる
・後継者は「周りが成果を出せる環境にしてこそ、信頼される」と考えるのがオススメ
・後継者育成のオススメは「現経営者にとっての課題を、現経営者と共に解決させる」
このコラムが、大切な会社を託す後継者の育成の一助になりましたら幸いです。
監修者
後継者育成相談協会 会長 小林英毅(オーダースーツ銀座英國屋 3代目)
1981年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。
オーダースーツ銀座英國屋の3代目社長。
一橋大学MBA・明治大学MBAにてゲスト講師。
今、日本では、「中小企業の事業承継が国の問題」とされ、国も、様々な施策を作り、事業承継の後押しを進めています。
そして、2025年には社長の64%にあたる方が、70歳以上になってしまい、廃業も進み、約650万人の雇用・約22兆円ものGDPが失われるともいわれています。
しかし、一向に、本当に必要な事業承継・後継者育成ノウハウが整備されていません。
私は、このままでは、事業承継・後継者育成の問題は解決されず、日本の「価値ある企業」が無くなってしまうと危機感を感じています。
このため、銀座英國屋の経営と並行して10年にわたり、事業承継・後継者育成に関わる相談を受けてきた者として、後継者育成相談協会を立ち上げました。